2016.11.08

“地の果て”の鰹節

ケルト人の遺跡でご紹介したガリシア州は西ヨーロッパのそのまた西の端、ローマ人からは フィニステーレ(finisterre・地の果て)と 呼ばれていました。北はビスケー湾、西は大西洋に面した海岸線は入江が複雑に入り組みその地形はここで呼ばれていた“ría リア(入江)”という言葉から今では世界中で“リアス式海岸”として知られています。日本でも瀬戸内や三陸、また伊勢志摩のリアス海岸は有名で、その栄養豊かで静かな海が育んだ海産物、とくにそれぞれ自慢の牡蠣は全国区ですよね。

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スペイン北西に位置するガリシア州の海岸線、北部が上リアス海岸、南部が下リアス海岸です。

ガリシア州も日本のリアス海岸に負けず劣らず海産物の宝庫。ここからスペイン全国に出荷しているのが入江に浮かべた筏で育てたムール貝、牡蠣、ホタテ貝などです。また伊勢エビやロブスターから小エビや蟹類までたくさん生息しているのでそいつらを捕食しているご当地の蛸は不味い訳がありません。 以前の投稿でもガリシア名物ゆで蛸をご紹介しましたがこのような理由もあったのです。

先日この“地の果てガリシア”リアスの漁村で海鮮祭りに参加してまいりました。O Grove(オ・グローベ)という人口一万人余りの港町、目の前に養殖筏が並んでいます。美しい海岸や涼しい気候を求めて避暑客も多く、そのお客様目当ての筏巡りの観光船が大人気です。1時間半程度湾をめぐりながら養殖の仕方を説明してくれます。しかし、なんといっても最大の“売り”は船上で振る舞われる食べ放題の蒸し立てムール貝と飲み放題の地酒の白ワイン、これで込み込み お一人様15ユーロ(1700円程度)とは、何事も“放題”に目がない私たち、大満足して千鳥足での下船となりました。

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筏の脇に一時停船、養殖の説明をしてくれます。

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実はこれが目的の“放題”セット、食べ終わるとすぐに次がくる“わんこムール貝”状態。

それから“海鮮祭り”の巨大テントへ移動し、今度は立ち食いで海鮮パエージャ、目と鼻の先で養殖していた生ガキ、海鮮ウドンもどきのパスタや小エビの塩茹でなど小皿料理で〆ました。この季節、雨が多い土地柄の閑散期を何とか活気づけたいとの地元の意向が大当たり、観光バスも続々到着して大盛況の“海鮮祭り”でした。

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お祭り公式ポスター。
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会場限定販売白ワインまで作っちゃいました。

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祭りを盛り上げるバイトの若者海鮮5人組。
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パエージャ屋台の調理主任アルフォンソさん、現地有名料亭から出張しているそうです。

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ムール貝の放題し過ぎで、本番のお祭り会場ではこれだけ食べるのが精一杯でした。

そういえばお隣のフランス・ブルターニュ地方にも同じ名前のフィニステール県(地の果て県)がありますね。やはりフランスでも最西端。この両地方 いろいろ共通点があるようで、複雑の入り組んだリアス式海岸も一緒なら、もちろん海産物が絶品なのも一緒、また、なぜか両者美味しいジャガイモの産地としても知られています。それから重要な海軍基地が存在するのもこれまた一緒。

もう一つ共通点はなんと日本特産の鰹節です。欧州連合は含有物質が有害として輸入を禁止しました。世界的和食ブームで本格的な調理が求められる中 必須アイテムの鰹節が禁じ手になってしまったのです。それでは現地の基準に即して作ってしまえということで白羽の矢が立ったのが スペインとフランスの“地の果て地方”東京は築地の名代鰹節屋さんはスペインのFinisterre ガリシア州で製造開始、鹿児島のご同業はフランスのFinistère県での生産と相成りました。鰹が沢山水揚げされるというより、両地方とも海産物加工業の伝統があるからでしょうか? 今までは燻(いぶし)の工程を省いた中国や韓国産の鰹節もどきが使われていた状態から漸く日本式の“本物”を欧州の皆さまに味わっていただくことが出来るようになりました。